意外と知らない？長押の役割と歴史
先生、長押って、服をかけるところって理解でいいんですか？
うーん、半分正解で半分間違いかな。確かに今はコートをかけたりするのに使われているけど、元々は違う目的があったんだよ。
え、そうなんですか？
そうなんだ。長押は鴨居の上につける装飾と、柱と柱をつないで家を補強する役割があったんだよ。昔の家は木造建築だから、地震などで家が歪まないように工夫されていたんだね。
長押とは。
「長押」は、日本の伝統的な建築用語で、鴨居の上部に沿って水平に設置される横木のことです。台形の断面をしており、壁の装飾と構造補強の役割を担いました。柱と柱を繋ぎ、建物全体の強度を高めるために、柱の外側から打ち付けられています。現代の住宅では、ハンガーなどを掛けるための横木として見られることもありますが、本来は物を掛けるための部材ではありません。
現代の住宅で見かける長押
現代の住宅において、長押はかつてのような構造材としての役割は薄れ、装飾的な意味合いが強くなっています。しかし、全く姿を消してしまったわけではありません。和室のデザインを引き締めるアクセントとして、あるいは現代的なインテリアにも馴染むシンプルなラインとして、現代の住宅にも長押は取り入れられています。例えば、リビングの一角に設けた和コーナーや、寝室の床の間など、空間にメリハリを与えたい場合に効果を発します。また、近年では、長押をギャラリーのように活用し、絵画や写真を飾ったり、小物を置いたりするなど、住む人の個性を表現する場としても注目されています。このように、現代の住宅においても、長押は伝統的な要素を残しつつ、新しい解釈を加えることで、その魅力を再発見されつつあります。
長押本来の役割とは？
「長押」って、和室の壁の上の方についている、あの横木のことですよね。なんとなく和風な雰囲気を出している気もするけど…、実際どんな役割があるの？と疑問に思ったことはありませんか？ 実は長押は、単なる装飾ではなく、日本の住環境において重要な役割を担ってきた部材なのです。
構造を支える縁の下の力持ち
「長押（なげし）」は、日本の伝統的な建築様式に見られる、横に長く伸びた部材です。壁の高さの中間あたりに取り付けられており、一見すると装飾的な要素にも思えますが、実は家の構造を支えるための重要な役割を担っています。
長押は、柱と柱を水平方向に繋ぐことで、地震や風などの横からの力に対して建物を補強する役割を果たします。特に、日本の伝統的な木造建築では、柱と梁を組み合わせた軸組構造が基本となっています。この構造は、縦方向の力には強いものの、横からの力には弱いという特徴があります。そこで、長押を柱と柱の間に渡すことで、建物の強度を高め、地震などの災害から家を守る役割を果たしていたのです。
時代と共に変化する長押のデザイン
長押は、単なる装飾ではなく、その時代時代の建築様式や技術、そして美意識を反映しながら、多様なデザインに変化してきました。古くは、柱と柱を強固に繋ぎとめるための構造的な役割を担っていたため、シンプルで力強い形状が主流でした。例えば、法隆寺に見られるような、太く重厚な長押は、当時の建築技術の高さを物語っています。
時代が進むにつれて、長押は装飾的な要素が強くなり、貴族の邸宅などでは、華やかで繊細な彫刻が施されるようになりました。平安時代の寝殿造りでは、優美な曲線を描く長押が用いられ、そこに描かれた絵画や模様は、当時の貴族文化を現代に伝える貴重な資料となっています。
近世になると、庶民の住居にも長押が取り入れられるようになり、シンプルなデザインながらも、素材や仕上げ方に工夫を凝らすことで、それぞれの家の個性が出されるようになりました。現代の住宅では、和室だけでなく、洋室にも取り入れられるなど、そのデザインは時代に合わせて変化し続けています。
長押から読み解く、日本の建築の知恵
日本の伝統的な建築様式において、「長押（なげし）」は欠かせない存在です。天井と床の間などの間にある、水平に渡された木材のことを指しますが、単なる装飾ではなく、日本の建築の知恵が詰まった重要な役割を担っています。
まず、長押は構造的な補強としての役割を果たします。日本の伝統的な木造建築では、柱と梁を組み合わせることで建物を支えています。そこに長押を加えることで、横からの力に対する強度を高め、地震や台風などの自然災害から家屋を守ってきました。
また、長押は空間を仕切る役割も担います。畳の縁を隠すことで空間をすっきりと見せたり、異なる高さに設置することで部屋の中に緩やかなメリハリを生み出したりすることができます。さらに、掛軸や花を生けるなど、装飾の起点としても利用されてきました。
このように、長押は日本の風土や文化に根ざした、機能性と美しさを兼ね備えた建築要素と言えるでしょう。現代の住宅では、必ずしも見られるわけではありませんが、その役割や歴史を知ることで、改めて日本の建築の奥深さに触れることができるのではないでしょうか。